特集:
2008/05/17 日記<年金未納問題>
年金未納問題
年金未納問題(ねんきんみのうもんだい)とは、日本の年金制度が国民皆年金であるにもかかわらず、国民年金保険料(第1号被保険者)の未納率が高い(納付率が低い)ことである。国民からは、国民年金保険料を納付しやすいサービスや徴収の徹底が求められている。本項では、公的年金に関する記録・手続等が適正であるのにもかかわらず、加入者が故意に保険料を納付していないことについて述べる。公的年金の記録・手続等が不適正であったため発生した未納に関することについては、''年金記録問題''、''国民年金不正免除問題''を参照のこと。
国民年金の概要
国民年金は、日本国内に住所のある20歳以上60歳未満のすべての人が強制加入し、老齢・障害・死亡の保険事故に該当したときに基礎年金を支給する公的年金制度である。国民年金の被保険者は、職業・就労形態や保険料の納め方で3種類(第1号・第2号・第3号被保険者)に分かれているが、国民年金に保険料を直接納めるのは、第1号被保険者のみである。
保険料の納付義務
保険料の納付義務は、第1号被保険者本人にあるが、本人に収入がないときなどは、世帯主や配偶者も連帯して保険料を納付する義務を負う。また、保険料は納付期限(翌月末まで)より2年を経過したときは、徴収する権利が時効により消滅するので、保険料を納める事ができなくなる。
保険料の免除
第1号被保険者は、保険料の負担能力に関係なく定額の保険料を納めることになっているが、様々な事情で納めることが困難な人もいるため、一定の要件に該当した時、所得が一定基準より少ない時、失業・災害に遭った時などは本人の届出や申請により免除される。
保険料の強制徴収
納入告知後の保険料や延滞金などの徴収金については、国税徴収法に基づき徴収することと規定され、徴収金を滞納した者に対しては、社会保険庁長官は督促を行い、指定した日(指定期限)までに保険料が納入されないときは滞納処分(差押・換価・充当(配当))を行うことができる。また、この場合には延滞金(年利14.6%)が課せられる。
関連項目
未納問題の経緯
1997年以降、住基ネットを活用して二十歳到達者の把握を行い、年金手帳を送付し、強制的に適用していくという仕組み(職権適用)はできていた。しかし、その後に種別の変更が生じたときに(第2号・第3号被保険者→第1号被保険者)十分に記録を追い切れず、場合によっては、強制徴収までつながるような仕組みはできていなかった。また、未納等の要因に応じた効率的・効果的な徴収対策も不十分であった。
2004年まで
3閣僚に年金未納期間のあったことが発覚したのを皮切りに、政治家の年金未納問題がクローズアップされた。社会保険庁職員約300人が興味本位で年金の個人情報を閲覧し、更にマスコミへ年金未納情報をリークしていた職員もいたことが判明し、社会保険庁の杜撰な個人情報管理が明るみに出た。
未納の要因
:制度発足時には所得のある自営業者・農漁業者の被保険者が多かったが、近年は無職・学生・フリーター等の所得が無いあるいは著しく低い被保険者が増加している。
:1995年度から、20 歳到達者で自ら資格取得の届出を行わない者に対して、職権適用を実施したが、職権適用者には、年金制度への関心や保険料納付の意識が薄い者が多い。経済の低迷、就業形態の多様化 により、離職等による第1号被保険者の増加や保険料負担能力の低下。
:免除基準を改正したことで、免除から外れた者が多く、これらの者の納付率が極めて低かった。保険料収納事務が市町村から国へ移管したが、収納体制の整備が遅れ、納付組織を活用できなかった。
未納の現状
国民年金(基礎年金)制度は全国民を対象とする制度であり、2006年3月末現在、公的年金加入者の約94%は保険料を納付(免除含む)している。未納者(約374万人)と未加入者(約27万人)の合計約401万人は、公的年金加入対象者数の5.7%である。
第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)のうち、過去2年間に1月も保険料を納付しなかった者
納付率
納付率の推移
近年の納付率は、1992年(平成4年)度の85.7%をピークに年々低下し、2002年度は大きく低下した。2003年度からは若干上昇している。2005年度は前年度に比べ、納付対象月数(分母)が7.5%減少したため、納付月数(分子)が2.4%減少しても、納付率は3.5ポイントアップした。このように納付月数(分子)が増えなくても、免除等が増えて納付対象月数(分母)が減れば納付率はアップする。これを保険料収納対策においては、分母対策と呼んでいる。また、2004年度分の最終的な納付率は、保険料を遡って納付したことにより、4.6ポイントアップし68.2%となっている。
:2002年(平成14年)度 62.8%→最終納付率66.9%
:2003年(平成15年)度 63.4%→最終納付率67.4%
:2004年(平成16年)度 63.6%→最終納付率68.2%
:2005年(平成17年)度 67.1%
納付率上昇要因
2004年度から2005年度にかけて納付率が3.5ポイントアップした要因は、主として法律改正と免除勧奨による分母対策である。
収納対策
納付率の目標
2007年度においては、現年度(2007年度)分の納付率の目標は80%、2005年度分の最終的な納付率の目標は74.5%である。また、市町村から提供された所得情報により、未納月数と所得からなる未納者属性の区分けを行い、未納者の属性に応じた効果的・効率的な収納対策を行うとしている。
2003年8月に国民年金特別対策本部において、中長期的な目標として2007年度の納付率80%が設定され、2004年10月に行動計画において、年度別の目標納付率が設定された。この80%という数字は、20歳到達者に対する職権適用がほぼ完全実施された1997年度の納付実績値79.6%を当面の目標値として設定された。
2002年度の納付率が大幅に低下したことを受け、収納対策を強化するために、厚生労働省に厚生労働大臣を本部長とする国民年金特別対策本部が設置され、各地方社会保険事務局に地方社会保険事務局長を本部長とする地方社会保険事務局国民年金特別対策本部が設置された。特別対策本部では、保険料の未納要因分析を踏まえて新たな個別収納対策を実施するとともに、保険料納付は国民の義務であるという意識の徹底を図ることとした。
:2004年度・・65.7%
:2005年度・・69.5%
:2006年度・・74.5%
:2007年度・・80.0%
強制徴収実施状況
被保険者及び連帯納付義務者(配偶者・世帯主)に十分な所得がありながら、保険料が長期間(13カ月〜24カ月)未納になっている被保険者については、強制徴収が行われている。度重なる納付催告に応じない未納者に対しては、最終催告状(滞納処分の手続きの前に未納者に自主納付を促す最後の通知)を送る。最終催告状の指定期限までに納付がない者には督促状(未納者に未納保険料を督促する法定の通知)を送る。督促状は法律上の行為であり、督促状を発行することによって滞納処分の第一着手となり、これによって時効が中断し、保険料の徴収時効がもう2年延びるという法律的な効果がある。督促状の指定期限までに納付がない者には財産調査(金融機関等に対し、預貯金等の差押え可能な財産の有無を調査)を行い、差押予告(期限までに納付がない場合、差押えをすることを予告する通知)を送る。指定した期限までに納付がない者には財産差押(預貯金等が主な対象)を執行する。
:2003年度・・最終催告状9,653件→督促状416件→財産差押49件
:2004年度・・最終催告状31,497件→督促状4,429件→財産差押512件
:2005年度・・最終催告状172,440件→督促状47,828件→財産差押5,558件
:2006年度・・最終催告状254,469件→督促状43,540件→財産差押1,310件強制徴収の実施規模を拡大し、最終催告状の発行目標は2006年度35万件、2007年度60万件である。
法改正(案)
:クレジットカードによる納付(2008年(平成20年)3月分保険料から実施)
:任意加入被保険者(60歳以上)の口座振替による納付の義務化
:生活保護受給者や学生等の免除手続の簡素化
:国民健康保険(市町村)との連携
:社会保険に密接に関わる事業者等(保険医療機関・保険薬局・指定訪問看護事業者、介護保険事業者・介護保険施設及び社会保険労務士)との連携
:事業主に対し、事業所における周知や保険料の納付の勧奨等に関して、必要な協力を求める。
今後の取組み
国民年金不正免除問題は、現在の収納対策の目標が、納付月数=収納実績(分子対策)と納付対象月数=免除実績(分母対策)を合わせた納付率という1つの数値のみで表されることが遠因の1つであった。収納対策の基本は、未納者から確実に保険料を徴収することであるが、一方で年金受給権確保のために、免除基準に該当する未納者を免除に結びつけることも重要である。納付率が収納実績(分子)と免除実績(分母)とで成り立っていることを踏まえ、それぞれの実績を評価できるような新たな仕組みを導入し、達成された納付率がどのような対策の結果によるものかを分析・検証するとしている。
関連項目
個人情報の漏洩
2004年3月から社会保険庁が保有する年金未納情報がマスコミで報道され、職員の個人情報の漏洩が疑われたため調査が実施され、同年7月に321名の職員の業務目的外の閲覧行為が明らかになった。その後、2004年1月から12月までの期間における職員の業務目的外の閲覧行為について、2005年3月に全職員を対象に自己申告調査を行った結果、1,535名(2004年7月の処分者321名を含む)の閲覧行為、オンライン通信履歴の記録をもとに調査を行った結果、1,574名の閲覧行為が明らかになった。
国会議員の未納
国民年金が創設された1961年当時は、国会議員は適用除外とされ加入できなかった。その後、1980年に議員年金の改正により任意加入となり、1986年に基礎年金制度が導入されて強制加入となった。したがって、国会議員は1961年4月1日から1986年3月31日までの期間は、強制加入者ではないため年金未納期間にはならない。2004年の国会期間中に3人の閣僚の年金未納が発覚したことに始まった国会議員の未納問題では、110人を超える議員に未納期間があったことが明らかになった。これは、主として法改正や種別変更により国民年金への加入義務が生じていながら、本人届出による切替手続きを行っていなかった(未加入)ため、納付書が届かずに納付できなかったことが原因である。この問題は、政治不信とともに年金不信を加速しただけでなく、年金運営事業である社会保険庁の収納体制や個人情報の管理が徹底していなかったことをも浮き彫りにした。
自己申告による調査
2005年3月に社会保険庁の全職員(職員17,692人、非常勤職員10,585人の合計28,277人)を対象に2004年1月から12月までの業務目的外閲覧の有無について、自己申告による調査結果は以下のとおりであった。
:職員 1,198人
:非常勤職員 337人
:国会議員 554人
:著名人(タレント、芸能人等) 343人
:友人、知人 472人
:その他(家族等) 596人
:興味本位 633回
:報道の確認 87回
:機器操作訓練等 26回
通信履歴による調査
社会保険庁の職員が、2004年1月から12月までの間に業務目的外閲覧した状況について、オンライン通信履歴の記録をもとに行った調査結果は以下のとおりであった。
:職員 1,244人
:非常勤職員 330人
:5月まで 1,328人
:6・7月 114人
:8月以降 132人
:国会議員 732人
:著名人(タレント、芸能人等) 987人
:友人、知人 202人
:興味本位 1,524人
:報道の確認 50人
職員の処分
年金個人情報の業務目的外閲覧については、個人情報を管理する行政機関としてあってはならないことであり、業務目的外閲覧を行った者及び管理監督者が処分された。
:閲覧行為者 321人
:監督者等 192人
:閲覧行為者 2,694人
:監督者等 579人
関連項目
個人情報保護対策
年金個人情報の管理責任の明確化やアクセス内容の監視体制の強化を図るため、以下の個人情報保護対策が行われた。
関連項目
外部リンク
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