特集:
2008/05/29 日記<住民基本台帳ネットワークシステム>
住民基本台帳ネットワークシステム
住民基本台帳ネットワークシステム(じゅうみんきほんだいちょう -)通称:住基ネットは、日本において、地方公共団体と行政機関で個々の日本国民を特定する情報を共有・利用することを目的として構築され稼働したシステム。市区町村の住民基本台帳に記録されている者(=日本国民)に11桁の住民票コードが割り当てられる。準備期間の間に総務省によるe-Japan|e-Japan重点計画の一環と位置付けられて稼働開始した。
住基ネットの構成
市区町村、都道府県、全国センター、および行政機関を結ぶ形で構成される。全国センターは指定情報機関である地方自治情報センターが運営している。
市町村
コミュニケーションサーバ(CS)という中継用のサーバが設置され、既存の業務ネットワークと住基ネット回線にそれぞれ個別のファイアウォールを介して接続する。既存の住民記録システムとは業務ネットワーク側のファイアウォールを通して通信を行う。また、CS端末と呼ぶ検索用端末があり、CSと通信して住基ネット上の情報を検索・表示することができる。CS端末はCSと同一のネットワークセグメントに置く場合と、業務ネットワーク内に置いてファイアウォール経由でCSにアクセスする場合と、両方ある。
都道府県
都道府県サーバが設置されており、ファイアウォールを介して住基ネット回線に接続する。
全国センター
業務/DBサーバと情報提供サーバが設置されている。業務/DBサーバは、住民票コードを割り当てられた者全ての情報を保持するものであり、情報提供サーバは行政機関からの検索に対して情報提供するものである。住基ネット回線と行政機関との通信回線の双方にファイアウォールを設置。なお、全国センターの所在地は公開されていない。
回線
住基ネットの回線は専用回線であるとされている。具体的には専用線ではなく、Virtual_Private_Network#IP-VPN|IP-VPNが今のところ用いられている。
住基ネット内で管理される情報
住基ネット上で管理する情報は、本人確認情報と呼ばれる個人を特定するための情報、および付随情報と呼ばれる、本人確認情報の変更履歴である。本人確認情報は住民票コードおよび4情報(氏名、生年月日、性別、住所)からなり、付随情報は変更年月日と変更理由を含む。
住基ネットを利用する手続・方法
パスポート申請や年金の請求、各種検定試験の申し込みに住民票の写しの添付が不要となる。
年金受給者が、年1回生存している事の証明の捺印を市区町村の窓口でもらい葉書で社会保険庁に返信していた「年金受給権者現況届」(現況届)が2007年12月から不要となる。加給年金額、加算額、加給金など加給年金額等を受け取る人(受給権者)の「生計維持確認届」と「障害状態確認届」については従来通り葉書などの返信方式で行う。(年金の種類により随時実施) 但し、住民基本台帳ネットワークシステムを利用して社会保険庁が確認できる様に住民基本台帳法第30条の7第3項の規定に基づき社会保険庁が行う。住民(受給権者)がシステムに参加していなければこれは行えない。年金受給権の現況を誕生月の末日までに社会保険庁が把握できない、または各種の現況届に記入漏れがあった場合は、年金の支給が一時止まることがある。 また「年金受給権者現況届」(現況届)が送付され返信しなければならないのは次の様な場合:住基ネットに加入していない市区町村へ転出、他の市区町村に転入したが転入手続きを行っていない、外国へ転出したなど。
この住民基本台帳ネットワークシステムは公的年金である国民年金および厚生年金や厚生年金基金の年金記録問題などの解決のための照合又は突合せ作業に使用される。ただし、住民である年金加入者および年金受給者がこのシステムに参加していなければその作業は行えない。
居住地以外でも住民票の写しの交付を受けることが出来る。(住民基本台帳カード、運転免許証やパスポートなどの官公庁が発行した写真付きの証明書が必要)
身分証明書としての利用。 住民基本台帳カードは、氏名のみが印字されたAバージョンと、写真と氏名・生年月日・性別・住所を印字したBバージョンがあり、希望のカードを選択することができる。写真付きの住民基本台帳カード(Bバージョン)は、市町村長が交付する公的な身分証明書として使え、運転免許証や健康保険証などが無くとも身分証明が行える。
転出届を転出先市区町村にあらかじめ郵便で届出する(付記転出届)ことにより、窓口での手続きを転入時の1回で済ませることが出来る(付記転入届)
公的個人認証サービスの電子証明書・秘密鍵の保存用カードとなる。(日本の行政機関|行政機関および地方公共団体へのあらかじめ定められた届出や申請などにおいて、印鑑と紙の印鑑証明書の組み合わせによる個人認証にかえて電子証明書を用いることでインターネット経由での届出・申請等を行うことが出来るようになる。)
住基ネットに対する問題提起
住基ネットは既存のインターネットと同一の技術で構成されていながらもかなりの精度で孤立したネットワークとなっているが、導入に前後してセキュリティやプライバシーの不安が取りざたされた。長野県はネットワークへの侵入実験を実施し、田中康夫知事(当時)は侵入可能であると公表した。実際には住基ネット内部に侵入することは出来ず、住基ネットに接続された庁舎内ネットワークに侵入したに過ぎなかったことが後日発表された資料により明らかとなった。法的に関連する個人情報保護法関連五法が成立するまでは施行を「違法」ととらえ接続しない自治体も相次いだ。反対運動も各地で起きた。現在でも一部の自治体(東京都杉並区等)ではコードの割り当てを行なっていなかったり希望者のみ割り当てを行なっている。次のような批判的な指摘もなされている。
住基ネット漏洩事件
2002年11月3日の北海道新聞朝刊に記載された記事で、苫小牧市のある家に、東京の金融業者から、突然「カネを借りろ」という電話があり、その業者の男は11桁の番号を何度も読み上げ、その人の住基ネットの番号をピタリ言い当てた。その上で、「オンラインで調べればなんでもわかる」と凄み、その人の口座番号や家族構成などその業者は言い当てて、その人の口座にお金を振り込むから、利子をつけて返せという「押し貸し」をされそうになった(即座に口座を凍結して未遂におわった)。いわゆるヤミ金融に情報が流出した事件である。
接続しない自治体や市民選択制を導入する一部自治体
国側などの主張
完全に接続していない市区町村は違法状態であり、それら職務に従事する職員にも地方公務員法違反ではないかとの疑義もある。また、横浜方式の接続も一方的に始めたものであり、上記の未接続自治体と同様に違法状態であることには変わりは無い。現に、札幌市も市民選択制度を取ろうとしたが違法状態を作り出すことになるとして断念しているし、住基ネット反対をマニフェストに掲げ当選した、埼玉県の上田清司知事、神奈川県の松沢成文知事も当選後に方針を翻している。その他、埼玉県志木市、北海道ニセコ町など同様に断念しているケースは多い。不接続・選択制を選ぶ、ないし求める自治体や反対派の主張
住民基本台帳法における市区町村の業務は法定受託事務ではなく市町村自治事務である。さらに、住民票コードの記載を定めた第30条の2や、都道府県知事への通知を定めた第30条の5などは「するものである」条項であり「しなければならない」条項とは違って実施にあたっては自治体の裁量の余地が大きい。従って、扱われる個人情報の安全性への法的・技術的な問題点や不安が払拭されていないという正当な理由のもとで、自治体が不接続や選択制を選ぶのは適法であるとするものである。住基ネットに関する訴訟
現在も、住基ネットを巡って各地で憲法訴訟が提起されているほか、関係経費の費用返還を求める住民監査請求、個人情報を外部に提供しないよう求める提供中止請求、個人個人に割り当てられた住民票コードの削除請求などの行政訴訟等が提起されている。なお、2004年2月27日、プライバシー侵害として慰謝料を求めていた裁判で、大阪地方裁判所は原告敗訴判決を行った(原告の一部は控訴している)。2005年5月30日、金沢地方裁判所は、住基ネットはプライバシーの保護を保障した日本国憲法第13条に違反する、と判断した。翌日、名古屋地方裁判所は、住基ネットはプライバシーの侵害を容易に引き起こす危険なシステムとは認められない、との判断を下した。相次いで相反する二つの判断が下された形となり、住基ネットの法的な位置づけの難しさが浮き彫りとなった。*石川県・愛知県の訴訟ともほぼ共通の訴えとなっており(細部では異なる部分もある)、「住民基本台帳ネットワークシステムはプライバシーの権利などを侵害し憲法違反である」などとして、石川県のケースでは同県の市民団体メンバー28人が、愛知県のケースでは住民13人が、それぞれ国や県・市などに個人情報削除や損害賠償などを求めた訴訟である。
うち箕面市は2006年12月7日に箕面市議会で、上告を断念したと藤沢純一市長が表明し、12月15日午前0時、箕面市に対して判決が確定した。
2008年3月6日、第1小法廷は、「法令等の根拠」に基づき、正当な「行政目的の範囲内」で行われて、「具体的な危険」が生じていないとの要件を示し、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有するものの、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された自由を侵害するものではないとし、『住民基本台帳ネットワークは憲法に違反しない』と初の合憲判断を下した。その上で二審の大阪高等裁判所の判決を破棄し、訴訟原告(被上告人)の請求を棄却した。*2006年12月11日、名古屋高等裁判所金沢支部は、正当な理由による公共の福祉による制限として許されると判示し、2005年5月30日の金沢地方裁判所の判決を取り消し、原告の請求を棄却した。
最高裁判決
2008年3月6日、最高裁判所第一小法廷(涌井紀夫裁判長)は、住基ネットを管理、利用等する行為は憲法13条に違反しないとして、大阪訴訟の高裁判決を破棄するとともに、石川訴訟他3件の上告を棄却したがその理由の要旨は以下のとおりである。* 憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものであり,個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を有する。* 住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は、氏名、生年月日、性別及び住所から成る4情報に、住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。このうち4情報は、人が社会生活を営む上で一定の範囲の他者には当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び異動前の本人確認情報にとどまるもので、これらはいずれも、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。住民票コードは、住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等を目的として、都道府県知事が無作為に指定した数列の中から市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから、上記目的に利用される限りにおいては、その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。* 住基ネットによる本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われているものということができる。住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から不当にアクセスされるなどして本人確認情報が容易に漏えいする具体的な危険はないこと、受領者による本人確認情報の目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等は、懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること、住基法は、都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を、指定情報処理機関に本人確認情報保護委員会を設置することとして、本人確認情報の適切な取扱いを担保するための制度的措置を講じていることなどに照らせば、住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということもできない。* また、行政機関個人情報保護法8条2項2号、3号によれば、行政機関の裁量により利用目的を変更して個人情報を保有することが許容されているし、行政機関は、法令に定める事務等の遂行に必要な限度で、かつ、相当の理由のあるときは,利用目的以外の目的のために保有個人情報を利用し又は提供することができるとしているが、住基法30条の34等の本人確認情報の保護規定は行政機関個人情報保護法に優先して適用されるし、システム上、住基カード内に記録された住民票コード等の本人確認情報が行政サービスを提供した行政機関のコンピュータに残る仕組みになっておらず、データマッチングは懲戒処分、刑事罰の対象となり、現行法上、本人確認情報の提供が認められている行政事務において取り扱われる個人情報を一元的に管理することができる機関又は主体は存在しないことなどにも照らせば住基ネットにより、個々の住民の多くのプライバシー情報が住民票コードを付されてデータマッチングされ、本人の予期しないときに予期しない範囲で行政機関に保有され、利用される具体的な危険が生じているとはいえない。* したがって、行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理、利用等する行為は、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表するものということはできず、当該個人がこれに同意していないとしても、憲法13条により保障された上記の自由を侵害するものではなく、自己のプライバシーに関わる情報の取扱いについて自己決定する権利ないし利益が違法に侵害されたとする被上告人ら(原告ら)の主張にも理由がない。
住基ネットに関する年表
住民基本台帳ネットワークシステムが稼動し、住民票の写しを全国どこの自治体でも取れるサービスや、住所移転時の転入転出届が1回でも可能などのサービスが受けられるようになった。
住民基本台帳カード(住基カード)の発行が開始され、希望者には500円で公的個人認証サービスに利用できる電子証明書が交付できるようになった。
公的個人認証サービスは住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を基にしており、現時点で利用できるカードは市区町村が発行している住基カードに限定されている。
関係省庁
関連項目
脚注
外部リンク
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